ついに来るべき時が来てしまった感じ。2022年10月23日(日)、対熊本ロアッソ戦をもって、中村俊輔君が現役を引退してしまった。
1962年生まれの私からしたら、1978年生まれの彼は16歳も年下。なのでプロデビュー前(アンダー世代)から活躍は聞いていたし、Jリーグ発足以来、好きなチームだった(残念ながら過去形)横浜マリノス(現在のFマリノス)に入ってからはずっと彼のファンだった。
というか私の日本人選手でのイチオシは、木村和司→井原正巳と続いてたんだけど、2000年のシーズンに井原がマリノスを追い出されてしまった以降、(数年前まで)ずっと俊輔君がイチオシ選手でありつづけた。
さて、私がスタジアムで実際に観た思い出を語ろうと思うんだけど、その前に。
俊輔選手の引退発表から10日間くらいたったかな、いろんなことが語られているけど、まあ直接FKのゴール(特にCLでのマンチェスターUからの2ゴール)に偏っていたと思う。
確かに凄かった。サッカーの試合の中で、FKは切り取りやすく(流れの中の得点だったら、どこから話をスタートするのか難しい)、言語化しやすく(主な駆け引きの相手はGK。プロスポーツが相撲や野球から始まっているこの国のスポーツジャーナリズムの枠組みに収まりやすい)、そして短い尺で説得力のある画が作れる。
が、だ。
試合全体での俊輔君の凄さはそれだけでは全くない。
①広く深い視野、②正確さとパワーを兼ねそろえた左足のキック、そして③深い切り返し、の3つが一人の選手に備わっている、奇跡のような選手が中村俊輔君だと思って私は観て、楽しませてもらった。
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①広く深い視野、②正確さとパワーを兼ねそろえた左足のキックは、ある意味、兼ねそろえないと意味がない能力なのかもしれない。どんな視野が広くて深くても、そこにボールを正確に届けられなければ意味がない(もちろん、広くて深い視野があったから、キックのチカラを磨く気持ちになれたのかもしれないけど)。
糸を引くようなボールで、対角線上に長いサイドチェンジを蹴って相手陣形を崩して行く俊輔君は凄くカッコ良かった。特にスタジアムの高い席で観ていると、まさに「俯瞰で観ている」ようなプレーだね。
同時期に活躍していた(時もあった)中田英寿君が将棋の「飛車」で、俊輔君は「角」の働き、だから上手く組み合わせればもっと代表は強くなるってあの頃はいつも思っていた。
で、③深い切り返し。若い頃はゴールに近い位置で決定的な仕事をするためにやっていたけど、30歳を超えてからは、切り返しながら、主に相手のスキを窺い、中盤でタメを作り、仲間を動かすために使っていたと思う。
横浜FCに移籍してきてから映像で観たプレーでは、この③深い切り返しの敏捷性?が落ちてきていたのか、それで相手をカワセなくなってきていて、「ああ、俊輔君もいよいよ引退か」と悲しくなったのを憶えてている。
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若い頃にはキーパーをあざ笑うかのようなループシュートとかの得意技もあった。
その俊輔君も44歳で引退。
良い指導者になって欲しいと心から願う。