ハトコのたわ言

趣味に生きる隠居のたわ言集です

036 パリー 交響曲第5番 他

無名名曲アルバム-パリー交響曲第5番

暗黙の前提としてマーラーより一世代前の作曲家を取り上げないのが、この「無名名曲アルバム」なんだけど、パリーはブルックナーマーラーの間の生年(ワーグナー1813:ブルックナー1824:ブラームス:1833:パリー1848:マーラー1860)>のイギリスの作曲家で、ちょっとグッと来るし、無名(聴いたことないでしょ)なんで取り上げてみました。Wikipediaとか見るとワグネリアンだけどブラームスの影響大、などと書いてあります。当然、この年代だから、前衛的な匂いは全然無い。この第5番は彼にとって最後の交響曲
CHANDOS CHAN8955
マシアス・バーメルト指揮 ロンドン・フィルハーモニック

交響曲第5番「交響的幻想曲」
第1楽章(Stress)、第2楽章(Love)、第3楽章(Play)、第4楽章(Now)と各楽章に表題らしい単語がついているけど、英語のライナーノーツ良く分らんからそこは割愛。全曲は通して演奏される。全体的にメロディはよいのだがオーケストレーションに華がないというか、色彩感が乏しいのが難点。弦楽中心で、木管金管の重ね方が余り上手とは言えないというのが全体を聞いた難点。録音が悪いせいもあると思うけど(繊細さに欠けて音の分離も良くない)。演奏も良くない(とくにオケの歌わせ方に問題アリ:印象的なメロディがいっぱい出てくるのに機械的つうか投げやりというか、ともかく現代的でノリが悪い)。
第1楽章はかなり劇的でよいメロディも出てくるけどメリハリに欠けるのが残念。
第2楽章はLoveって感じはしないな。愛の幸福感とかを感じさせる部分があってそこはいいんだけど、妙にエモーショナルな部分があってそれで台無しにしてくる。
第3楽章は、まあスケルツオだと思えばよろしいのか。はっきりいってつまらない。だいたい私はスケルツオ楽章って飛ばして聴くこと多いんだよね。これは別な話になっちゃうからいつか詳しく説明しましょう。ともかく私にとってはつまらない楽章。
しかし第4楽章はかなり良い。ちょっとR.シュトラウスの「死と変容」を思わせる出だしで、非常に美しい。これまでの短調中心から長調中心へ楽想も移り、こっちの方がLoveって感じ。まあ激しい紆余曲折の部分もあってそして第1楽章のテーマが長調で戻ってきて(ホントか?)、なかなかに盛り上がる。
「読後感」ならぬ「聴後感」がよろしいのでちょっとした名曲に聴こえる。

交響詩「死から生へ」 2部形式
第1部(Via Mortis)は序奏があってそれから葬送行進曲風の悲劇的なメロディが出てくる。ちょっと惹かれるけど、9分弱、その感触が持たない。もっと工夫しろ!
第2部(Via Vite)は生誕行進曲?風。生の喜びや楽しみ、至高の幸福感、なんて出てこない。ただひたすら楽しげに生誕行進曲がすすんでゆく。「死から生へ」という表題を見事に裏切ってくれるし、中間部分がちょっとダレるけど、これはこれで悪くない。

ブラームスへの哀歌(エレジー)
エレジーっていうからもっとしんみりしたものを予想したんだけど、胸が張り裂けんばかりの号泣!ってな大げさなもの。もっとしみじみとしたいい曲書かんかい!と言いたくなる。「号泣」としての出来もよろしくない(13分もあるのに曲の全体像が見えないから聴くのしんどい)。
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繰り返しになるけどこのアルバム、作曲者のオーケストレーションが上手くないか(その可能性が最も高い)、演奏がひどいのか、録音が悪いのか、ともかく油絵具を何重にも重ねた結果、灰色っぽい色彩になる、そんな感じで「無名名曲」として一押しはできないけど、まあ5番の第4楽章と「死から生へ」の第2部は聞いて損はしないでしょう。ただしNAXOSじゃないから高いので、超お勧めというわけではありません。

とまあ今年の「無名名曲」の書き込みはこれでおしまいなんだけど、パリーの交響曲全集というのが3枚組で出ているので購入してしまいました。http://www.ne.jp/asahi/mms-classic/mmwsp03f/english_music.htm のイギリス音楽についてのHPで第2番が絶賛されていたので。一聴した限りではそんなに大したことない感じだったんだけど、それについては来年おいおい書いてゆきます。では。