ハトコのたわ言

趣味に生きる隠居のたわ言集です

047 ホルスト セント・ポール組曲 他

無名名曲アルバム-ホルスト セント・ポール組曲  

ホルストと言えば組曲「惑星」。さて、「惑星」だけが有名なホルスト。他の作品はどうなのか?一発屋だったのか?
入手できるのはCHANDOSから出ている2枚、NAXOSから1枚(重複が多し)を順を追って聴いてみましょう。結論から言えば、大作は「惑星」1曲だけで、他に長い曲は見あたらない。

CHAN 9420は全6曲。リチャードヒコックス指揮、ロンドン交響楽団
■フーガ風序曲:どこがフーガ?5分弱の曲なのに、途中で弱音の部分が挟まって、それと大音量の管弦楽で(そこはちょっと格好いいけど)聴くのが苦痛。聴く人によっては華麗で派手な楽しい曲と捉える人もいるんだろうけど、私の好みじゃない。

■サマセット狂詩曲:メロディは悪くない(民謡から採譜しているよ うですが)けど、曲としてのバランスが悪すぎ。出だしはすごく良いんだけど、曲が進むに連れて、断片的で、バラバラの部分をつないでみました、という感じに聴こえるんだよね。

スケルツォ:やかましい!トリオの部分がやや良いかもしれないけどスケルツオ部分が・・・。だいたい、スケルツォだけ作曲する意味がわからない。

■エグドン・ヒース:これも断片的でバラバラの部分があって、特に4’40”から5’56”の曲が激情的な部分が、曲全体から浮いてる。それを除けば、中々渋くて良い曲ではないかと思う。

■ハマースミス(NAXOSでは「鍛冶屋」と訳されていたが、ホルストの住んでいた街の名前らしい):前奏曲スケルツォからなる曲。前奏曲クワイエットで良いんだけど、肝心のスケルツォが正直つまらない。

カプリッチョ(奇想曲):すごく雰囲気のあるイイで出しなのに、途中から妙に諧謔的になって、「何考えてんだよお前!」と言いたくなる。

 

全体に言って「惑星」で魅せたセンスはどこ行っちゃったの?という感じ。というか、部分的に良いメロディが出てくるけど、「惑星」みたいに構成力がない。繰り返しになるけど1曲の中でも妙に断片的(それは「惑星」でも言えるんだけど、あれは全体の構成が良かった)なものばかり。まあ、聴き手としてはどうしても「惑星」みたいな大曲を求めるところがあって、肩すかしにあう感じなんだな。それと最大の問題は「標題」でしょう。前に書いたニールセンの「不滅」みたいに、やっぱりグッと来る標題は必要だと言う事を後生の作曲家に学ばせてくれるのでした。

 

CHAN 9470は全6曲。リチャードヒコックス指揮、シティ・オブ・ロンドンシンフォニア
■二重協奏曲:二つのバイオリンと小編成オーケストラのための:15分弱の短いコンチェルトだけど、二つのバイオリンが旋律を奏で合い、管弦楽が溶け合い、第2楽章がちょっと弱い(というか退屈)けど、この曲はホルストにしてはかなり良い線行っている(お前は何様じゃ、というような不遜な発言だけど)。

■二つの無言歌:1曲目の「カントリーソング」。なかなか良いメロディで管弦楽法も冴えている。2曲目の「マーチングソング」。そんなに勇壮なもんじゃないけど、どことなく素朴な感触があって不思議に聴かせます。

■抒情的断片 ヴィオラと小編成オーケストラのための:ちょっと長い曲になると、ホルストの欠点である「構成力のなさ」が顔を出す。悪い曲じゃないけど、全体像が見えない。

■ブルック・グリーン組曲弦楽合奏のための曲。親しみやすいメロディ、素朴な手触りの佳曲。これは推測だけど、民謡を採取したものじゃないのかな?
■フーガ風協奏曲 Op.40-2 フルート、オーボエと弦楽オーケストラのための:これも親しみやすいメロディが楽しげに演奏される佳曲。でもフーガ風ではないけどな。あとエンディングが拍子抜け。たしかに小編成だけど、もっとかっちょいい終わらせ方してよ。

セント・ポール組曲弦楽合奏のための曲。ブルック・グリーン組曲と同じく、音楽の楽しみに溢れている佳曲。たまには、こういう素朴な曲もいいもんですね。

 

CHAN 9470のホルストの曲は「惑星」みたいな大編成オケじゃないホルストの一面を見せてくれていて、好感度高いアルバム。結構演奏もカジュアルな感じでよろしいのでは。一つ一つが断片的な欠点が、小曲であるがゆえに消されている。私は全然知らないし、興味もないですが、歌曲とか合っていた作曲家なのかもしれませんね。

 

NAXOS 8.553696はデーヴィッド・ロイド=ジョーンズ指揮、ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団というナクソス御用達の指揮・オケチーム。
CHANDOSのものと重複しないのは2曲だけ。
■ベニ・モラ(東洋的組曲):東洋的、っていっても日本人にとってはアラビア的。結構異国情緒ただよう、それが曲の芯となっているので、ホルストの欠点である構造の欠如を埋めて、非常によろしい。第3曲はフルートが執拗に反復するフレーズに乗って異常に盛り上がる。が、エンディングが尻すぼみ(フェイドアウトして終わる)。なんじゃこりゃ。

■チェロと管弦楽のための「祈り」:10分弱の曲なのに、いろんな要素が提示されていて、それに統一感がない。素朴で良いメロディが詰まっているのに、残念。

 

結論を言えば、大曲「惑星」に並ぶ作品はなく、そう言う面では一発屋といわれてもしょうがないでしょう。しつこく繰り返す事になるけど、彼には楽曲の構成力がなかった。

でも小作曲家として、CHAN 9470は、なかなか良いアルバムでした。それだけをお勧めします。他の2枚はお勧め出来ず。