ハトコのたわ言

趣味に生きる隠居のたわ言集です

034 グレツキ 悲歌のシンフォニー

悲歌のシンフォニー

ブログネタというのは無くなったと思ったらすぐ出てくるから面白い。

良かったのはシマノフスキじゃなくてグレツキだった!全然世代も違かった。
で、これ「無名名曲」とするにはちょっと「有名」な感じもする(いろんな人が指揮している)けど、まあ、いいものはいい、ということで。
グレツキは1933年生まれ。だけどこの曲は全然、悪い意味の前衛っぽくない。基本的にはすべてゆっくりしたテンポで弦楽主体のオーケストラにソプラノの歌が入る。
歌詞は息子を(たぶんナチに殺された)を悼むような内容。だからと言って音楽は暗い訳じゃない。メロディーの繰り返しが続いて行くんで、はやり?のミニマリズム(反復を繰り返す音楽)っぽい側面もあるのかもしれないけど、全体の楽想の流れは自然。柔らかく心にしみ入るような、そう、フォーレのレクイエムの終曲を思わせるような天上の音楽。ずばりこれは名曲でしょ。
私が持っているのはワーナーの日本盤WPCC-5340のデイヴィッド・ジンマン/ロンドン・シンフォニエッタ S.ドーン・アップショウと、NAXOS盤の8.550822(こちらは「嘆きの歌の交響曲」と訳されている)アントニ・ヴィト/ポーランド国立放送カトヴィツェ交響楽団 S.ゾフィア・キラノヴィッツの2枚。私は聴き比べが嫌いなのであれこれ言いたくはないんだけど、演奏・録音・ソリストともジンマン指揮の方が良いように思える。NAXOS盤はおまけに「3つの古代風小品」という弦楽合奏の曲が付いていて、中々聴かせるんでどちらを買うか迷うところだけど。
悲歌のシンフォニーNaxos

だけども、結論を言えば、ワーナー盤の方がお勧め。しかし既にワーナーの日本版は廃盤になっていて入手困難。で外盤は出ているんでそっちをお勧め。絶対、この曲はいい!

で、著作権に触れるかもしれないけど、外盤をお買いあげの方のために歌詞の日本語訳をつけときます。
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歌詞対訳
沼野充義
■第1楽章
私の愛しい、選ぱれた息子よ、
自分の傷を母と分かち合いたまえ。
愛しい息子よ、私はあなたをこの胸のうちにいだき
忠実に仕えてきたではありませんか。
母に話しかけ、喜ぱせておくれ。
わたしの愛しい望みよ、あなたはもうわたしのもとを離れようとしているのだか。
【聖一十字架膣適院の哀歌、「ウィソグラの歌」より。15世紀後半】

■第2楽章
お母さま、どうか泣かないでください。
天のいと清らかな女王さま、
どうかいつもわたしを助けてくださるよう。
アヴェ・マリア
ナチス・ドイツ警寮の本部かあったザコパネの「パレス」で、第3独房の壁に刻み込まれた祈り。その下に・ヘレナ・ヴ了ンダ・プワジュシャクヴナの署名があり、18歳、1944年9月25日より投獄される、と書かれている】

■第3楽章
わたしの愛しい息子は
どこへ行ってしまったの?
きっと蜂起のときに
悪い敵に殺されたのでしょう
  人でなしども
  後生だから教えて
  どうしてわたしの
  息子を殺したの
もう決してわたしは
息子に助けてもらうことはできない
たとえどんなに涙を流して
この老いた目を泣きつぷしても
  たとえわたしの苦い涙から
  もう1つのオドラ川ができたとしても
  それでもわたしの息子は
  生き返リはしない
息子はどこかで墓に眠っている
でもわたしには、どこだかわからない
いたるところで
人に聞いてまわっても
  かわいそうな息子は、どこかの穴で
  横たわっているのかもしれない
  暖炉のわきの自分の寝床で
  眠ることもできたはずなのに
神の小鳥たち、どうか息子のために
さえずってあげて
母親が息子を
見つけられないでいるのだから
  神の花よ、あたり一面に
  咲いてください
  せめて息子が楽しく
  眠れるように
【オポーレ地方の民謡】